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熊、イノシシ、異常な出没は餌不足や山が荒れたせいだけではない。

■異常な出没はエサ不足の他に要因があるはず
今年の熊や猪の出没は異常なくらい多い。秋は冬眠前で餌をたくさん必要としているので、人里まで出てきて餌を探すことも多くなるのは、ある意味必然なのだが、人を恐れなくなっていることが一番の問題ではないかと思う。
昔から、クリやドングリなどは、豊作の年と不作の年を繰り返し、十年とか二十年に一度、大不作の年がある。だからと言って、人里に今のように野生獣が出没することはなかった。山が荒れたとの説もあるが、餌のない山は今に始まったことではない。かつて中国地方の山は、製鉄や製塩・製陶のために薪を大量に使い、里の山の樹々は大量に切られて、江戸時代から昭和初期まで想像以上に山林は荒廃し禿山が広がっていた。
健全(人間が考える健全だけど)な山の時代はわずかな時間だけで、野生の生き物は減少しているとかまた増えたのではないかとも言われていて、どちらが正しいのかもわからない。ただ言えることは、餌が多く快適に暮らせる場所が多くなれば野生の生き物は増え、餌が少なく棲みよい場所が少なくなれば野生の生き物は減少するのは自然の摂理なので、餌が少なくなれば当然淘汰されるだろう。今年の出没の多さの理由は、単純に餌が少ないとか、山が荒廃しているのに急に個体が増えたからとは考えられない。
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■人を恐れなくなった野生獣
元々、熊やイノシシに限らず野生の生き物は、最も怖いのが人間(人間と人間と一緒に生活している犬)で、普通なら山の中でも人間よりも早く獣の方が人間の存在に気が付き、まずは逃げ出す。逃げない場合でも遠くから威嚇する(イノシシの場合は地面をドドドドドと踏み鳴らして威嚇する)。多くの野生獣が昼間に里付近をうろつくことは少なく、多くの場合は夜に行動することが多く夜行性とも思われていたが、イノシシと同じ種のブタが昼間に活動するのを見ても、元々は昼行性で、人間の行動と重ならないように夜活動するようになったと考えられている。
実際、私は中国山地のほぼ真ん中の小さな田舎町の農家に生まれ、小学生の低学年の頃から田んぼで農作業し、山に草刈り・薪づくり・炭焼き・山菜やキノコ採りに日常的に行なってきた。山は結構深くて一人で行くのを今は躊躇してしまうが、60年前頃は、当たり前のように行き、山で野生獣に出逢ったこと、見かけたことはせいぜいヤマドリ、キジなどの大型の鳥とウサギくらいのもの。猪や熊の痕跡あっても見かけたことはない。私の身近に野生のイノシシが出たのは、25,6年前のことで、その少し前くらいからイノシシ以外のキツネやタヌキ、アナグマなどの野生獣も頻繁に見るようになったのである。
そんな野生獣が、昼間に堂々と人間のそばに出るようになったのは、もちろんエサ不足などの要因はあるだろうが、何よりも、もっとも危険で恐ろしい存在であった人間が怖くなくなったからだと思う。もっと言うなら、人間と一緒に生活してきた犬が里から姿を消したこと。犬のいない里というわけではなく、犬がペットになり、きっちりと鎖につながれて、野生獣の脅威になる犬がいなくなったことが最も大きな要因だと思う。
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■昔の犬は人を守ると共に里を守っていた
2008年から3年間、獣害対策を広島大学生物圏の先生と行った。研究の目的は野生獣(特にイノシシ)の行動調査と、防止対策としてもっとも効果的なものを探ること。行動調査では、行動範囲は概ね数キロ範囲、時間は夕方から数時間と明け方数時間が最も行動している事がわかり、防止対策としてはとにかく防止ネットなどの隙間(道路を含め)を作らない事と「犬」が絶対的であること。道路からの侵入にはグレーチングに効果があることがはっきりとした。
私たちが提案したのは「※里守り犬(さともりけん)」と、道路対策としてはアメリカの牧場などの入り口に設置するテキサスゲート(牛が出入りを嫌がる)に変わるもの。
「犬」の効果検証は、イノシシが侵入し掘り返して困っていた牧草地に、横断するように100メートルくらいのワイヤーを張り、犬が自由に走り回れるようにして実験した。出来るなら和犬で行いたかったのだが、ある程度訓練された犬が必要だったので、警察犬候補の若い雌のシェパード。周囲には家も人間もいない環境である。効果はてきめん。実施した一ヵ月間、一度もその牧草地にイノシシの侵入はなかった。「里守り犬」の初期的検証としては効果がはっきりと示された。
※「里守り犬」の構想は、過去に獣害対策を研究しているときに、アマゾンの原住民が集落を守る犬を飼っていることや、モンゴルなどで放牧する家畜を狼から守る牧羊犬がいる事。アメリカなどの大邸宅では、邸宅に侵入する者から守るガ―ディングドックの存在がある事。あわせて、私の昔の田舎体験、家で飼っていた犬も結構放し飼いになっていたり、野犬も結構いて、野生獣から里を守るには絶妙な関係が出来ていた事。などを総合し、「里守り犬」と命名し研究を広島大学の先生に提案し、始まったものである。
実験での最大の壁は、人の意識。「犬の放し飼いなど持ってのほか」「犬に襲われたらどうするの」と言う地域住民の声。動物保護法では犬は鎖などでしっかりと管理できる状態で飼わなくてはならないと定められている。ただし、使役犬はその限りではないとの一文もある。警察犬や盲導犬介護犬などの使役犬はその対象にならないのである。人に危害を加えないようきちんと訓練をし「里守り犬」として認定できる試験、更には犬が怖いなどの住民感情の解消など課題は沢山あるが、「里守り犬」が日本で市民権を得ることが出来れば、里の獣被害は劇的に解消できるのではないかと思う。
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■道路を封鎖できない、現況の防止策の穴は道路
いくら田畑や山との境界に獣がネットを張っても、集落に通じる道路を封鎖することは不可能。かつては、イノシシは道路を通るのを嫌がるとの説もあったが、いまや道路こそ歩きやすくイノシシの通り道にさえなっている。私の集落でも何カ所か侵入経路に道路があった。車がやっと通れるくらいの町道だが、封鎖することできず、周囲をいくらネットで囲ってもその道路を通ってイノシシなどが侵入を繰り返す。
そんな時、大朝では昔から牛馬を飼っていて、その中に花田植えに出る飾り牛がいる。その牛はグレーチングの上を歩くのを嫌がるので歩く訓練をしなくてはいけないとの情報。ならば同じ偶蹄目のイノシシもグレーチングを嫌がるのではと、広大の先生に提案すると、「アメリカにテキサスゲートと言うのがあって、発想は同じなので効果があるかもしれない」との事。ならばテキサスゲートを道路に設置して見るしかない、と検証開始。町と地域住民に協力いただき、本来は側溝のふたにするグレーチングを道路幅いっぱいで長さは約3メートル。本来なら道路を切って深くしたいのだが、仮設なのでそのまま道路に敷きスロープは土でなだらかに整地。監視カメラも設置して近づく野生獣の行動も調査。成果は見事だった。近くまで来た野生獣は手前でUターンして飛び越えていくものはいない。グレーチングが野生獣の侵入防止に効果があることも実証できたのである。課題は、広い道路や交通量の多い道路にどう設置することが出来るか、道路法や安全の確保、行政の理解の他、より野生獣に効果があり、人や自転車、自動車の通行に支障のないグレーチングの開発を行うことである。

■野生獣の出没を防ぐには新しい発想と仕組みが必要
現状で野生獣の出没や被害を防ぐには「餌になるものを里に置かない」「獣害ネットや電気柵の設置」「現れた野生獣は駆除する」方法しか予防の良い方法はない。かわいそうでも、山に返してやっても問題は解決されない。山には餌の限界もあるし、テリトリーがあり、それ以上に増えたらテリトリーの外に進出するしかないので、多少危険でも人に近いところで生活する野生獣は必ず現れる、そこで駆除すれば、空白地帯となるので、新たな野生獣が新たにそこに進出するだけである。
そう考えると、どう考えても人間は恐ろしい生き物であることを野生獣に知らしめることしかない。そのためには、共に暮らし人間を守ってくれる存在であった犬に「里守り犬」という使役を与え、日本中で育てて地域犬として地域と一緒に暮らすことを考えるしかないように思う。我々は、アマゾンの原住民やモンゴルの放牧民から学ぶ必要がありそうだ。


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by mizunohurusato | 2023-11-16 21:25 | 思うこと | Comments(0)

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